生命保険は基本要素の組み合わせ
生命保険は生死に関わる保険であり、多くの人が加入していますが自分の加入している保険の内容をしっかり理解している人は少ないのではないでしょうか。
その理由のひとつには生命保険の分かり難さがあります。
生命保険はいろいろな角度から基本的な要素に分類する事ができ、実際にはそれぞれの要素が複雑に組み合わさって保険加入者に経済的な保障を提供しています。いろいろな角度から分類した生命保険の基本的な要素を理解する事で難しく感じる生命保険も少しは理解しやすくなるのではないでしょうか。
いろいろな角度から見た生命保険の分類
@被保険者の生死の支払条件で分類
- 死亡保険・・・被保険者が死亡する事で保険金が貰える生命保険。
定期保険や終身保険も死亡保険の一種です。
- 生存保険・・・被保険者が契約期日まで生きている事で保険金が貰える生命保険。
- 生死混合保険・・・死亡保険と生存保険を合わせたタイプの生命保険です。契約期間中に被保険者が死亡すると保険金が貰えますし、決められた期日まで生きていても貰えます。
養老保険も生死混合保険に分類されます。
A保険の対象期間で分類
- 定期保険・・・被保険者が予め契約した一定期間内に死亡すると保険金がもらえる生命保険。
海外保険も定期保険に含まれます。海外旅行生命保険も定期保険に含まれます。
- 終身保険・・・期間を決めずに被保険者が死亡した時点で保険金がもらえる生命保険。
B保険加入の単位で分類
- 個人保険・・・個人単位で加入する保険。
個人保険は一人の被保険者の生死により保険金がおりる単生生命保険と複数の被保険者の生死で保険金がおりる連生生命保険に分かれます。
連生生命保険には家族保険、こども保険などがあります。 - 団体生命保険・・・多人数の集団がひとつの契約に一括して加入する生命保険。
住宅ローンを組んだ時に加入する、団体信用生命保険や企業保険など。
C保険加入の際の医師の診断の要、不要で分類
- 有診査保険・・・保険加入の際に医師による診断が必要な生命保険
- 無診査保険・・・保険加入の際に医師による診断が不要な生命保険。
ただし、加入の際には保険会社の指定する健康上の重要事項について告知義務が負わされています。
D被保険者の健康状態で分類
- 標準体保険・・・普通の健康状態で保険事故になるような明らかなリスクが無い標準体の人が普通保険料で加入する保険。
- 境界体保険・・・標準体と標準下体の境界あたりに該当する人を対象にした保険。保険金の上限が設定されるなどの制限が付きます。
- 標準下体保険・・・健康状態が悪く標準帯の人と比べて保険事故につながるリスクが高い人が特別保険料の徴収や保険金の削減などの条件を付ける事でギリギリ入れる保険。
上記3つに該当する人は生命保険に加入できるという意味で保険体(保険可能体)と言います。
生命保険に加入できないほど健康状態が悪い人を非保険体(謝絶体)と言います。
E保険契約者と被保険者の関係で分類
- 自己の生命保険契約・・・保険契約者と被保険者が同じ。
- 他人の生命保険契約・・・保険契約者と被保険者が別人。
他人の生命保険契約が死亡保険の場合は保険金殺人などのモラルハザードを防ぐ為に被保険者の同意が必要とされています。
経営者を被保険者、死亡時の受取人を会社とした経営者保険も他人の生命保険の一種です。
F保険契約者と保険金受取人の関係で分類
- 自己の為にする生命保険契約・・・保険契約者と保険金受取人が同じ。
- 他人の為にする生命保険契約・・・保険契約者と保険金受取人が別人。
例1:保険契約者と被保険者が父親、死亡時の受取人が子供
例2:保険契約者と被保険者が債務者、死亡時の受取人が債権者
G被保険者の社会経済的な区分で分類
- 家計保険・・・保険契約者が自分と家族の経済的保障を得る為に個人的に加入する保険。
- 企業保険・・・企業が被雇用者の在職中、又は退職後のの経済的保障をする為に企業単位で加入する保険。
在職中の経済的保障をする為の保険の例:団体定期保険・経営者保険など。
退職後の経済的保障をする為の保険の例:厚生年金基金保険・適格退職年金保険など。
H保険料の支払い方法で分類
- 一時払い保険・・・保険加入の際に一括で全額保険料を支払う保険。
- 分割払い保険・・・分割で支払う保険。年払い保険・半年払い保険・月払い保険に分けられます。
I保険金の支払い方法・回数で分類
- 一時金保険・・・保険金の支払が1回限りの保険。
- 年金保険・・・保険金が被保険者の生存期間中又は、一定期間継続して支払われる生命保険。
終身年金保険・・・被保険者が生存期間中、継続して保険金が支払われる。
定期年金・有期年金保険・・・一定期間に限定して保険金が支払われる。
J保険金額の変動の有無で分類
- 定額保険・・・保険金額に変動が無く定額受け取れる保険
- 変額保険・・・保険料の全部、又は一部を投資、運用しその成果によって受け取れる保険金額が変動する保険
K保険金額の増減の有無で分類
- 逓減保険(ていげんほけん)・・・保険金額が時間の経過と共に減少していく生命保険
- 逓増保険(ていぞう保険)・・・保険金額が時間の経過と共に増加していく生命保険
L契約者配当の有無で分類
- 有配当保険・・・保険資金の投資運用益の大部分を保険契約者に配当する保険
- 準有配当保険・・・有配当保険よりも配当が少なくなる代わりに保険料が安くなる、有配当保険と無配当保険の中間に位置する保険
- 無配当保険・・・保険資金の投資運用益を見込んで予め保険料を低く設定している為、契約者に配当を行わない保険
保険会社で販売されている保険
ここでは先の要素の組み合わせにより、実際に保険会社が扱っている主な生命保険の種類を紹介します。
定期付終身保険
予め設定した一定期間中に死亡した場合に受け取れる保険金が、それ以降に死亡した場合に受け取れる終身保険金の2〜20倍に設定されている保険
定期付養老保険
保険期間の途中で死亡した場合の死亡保険金が満期まで生存していた場合に受け取れる保険金の2〜20倍に設定されている生死混合保険
利率変動型積立終身保険
保険資金の運用により死亡保険金や解約時の変戻金が増加する可能性のある終身保険
生存給付金付定期保険
被保険者が一定期間中に死亡した場合に保険金が受け取れる定期死亡保険でありながら保険期間中に生存していても一定年数経過ごとに生存給付金が受け取れる保険。満期時に満期保険金も受け取れます。
生前給付型保険
リビング・ニーズ特約・・・余命6ヶ月以内を宣告されると被保険者が亡くなる前にほけんきんの一部または全額がもらえるタイプの生命保険。
特定疾病保障保険・・・医師から癌、脳卒中、急性心筋梗塞の三大疾病の診断が下りると保険金がもらえます。死亡保障に医療保障が加わった生命保険。
疾病保険(医療保険)・・・医療保障を重視した生命保険
介護保険・・・被保険者が要介護状態になった時に定期的に一定の保険金が支払われる生命保険。
就業不能保障保険・・・労働による所得で暮らしている人を対象に病気やケガで働けなくなった場合に減少した収入を保障します。
心身障害者扶養者生命保険・・・独立行政法人福祉医療機構を保険契約者及び保険金受取人とし、心身障害者の扶養者を被保険者とする団体生命保険。
生命保険の特約・・・主契約となる生命保険の約款の内容を補充・変更・排除する為、特別に追加する契約
生命保険の種類と分類記事一覧
就業不能保障保険
サラリーマンや自営業など、就業することにより得られる所得で生活している人を対象に病気やケガで働けなくなった場合に減少した収入を保障します。よく体が資本と言いますが健康でバリバリ働ける内は良いですが、万一事故や病気で思うように働けなくなってしまうとたちまち収入がSTOPしてしまいます。就業不能保障保険は被保険者が事故や病気で就業不能になってしまった場合に毎月一定額の保険金が支払われ、被保険者や家族の生活を支えてくれるので近頃人気の保険です。しかし、この保険には就業不能であっても保険金が支払われない免責期間が設けられているところに特徴があるので注意が必要です。例えばライフネット生命では就業不能状態...
生命保険の特約
主契約となる生命保険の約款の内容を補充・変更・排除する為、特別に追加する保険契約。特別保険約款、特別条項とも言い、特約とは特別保険約款の略称です。通常、生命保険では保障内容を充実させる為に主契約に特約をプラスする事で保険契約者の金銭面を多種多様に支えます。基本となる標準的な生命保険契約の内容を法律的に規定したものを普通保険約款と言いますが、特約はその内容に補充、変更、排除する為にしばしば用いられます。特約が沢山付いていると保障が充実するので「こんな時も保証してもらえるんだ!」「ああ、こんな時も!」と安心した気分になりがちですが、生命保険の特約はタダではありません。特約が付いていればその分だけ保...
心身障害者扶養者生命保険
心身障害者扶養者生命保険とは、独立行政法人福祉医療機構を保険契約者及び保険金受取人とし、心身障害者の扶養者を被保険者とする団体生命保険です。心身障害者を扶養する保護者が毎月一定の掛け金を支払う事により、自らが死亡又は重度障害者となった場合も扶養していた心身障害者の生活の安定が図れるようにする事を目的として都道府県、指定都市が実施している任意加入の団体生命保険。この保険は心身障害者を扶養する保護者が毎月一定の掛け金(保険料)を支払う事により、、自らが死亡又は重度障害者となった時、心身障害者に終身年金として生涯に渡りずっと支払われます。保険金額は1口加入で月額2万円、2口加入で月額4万円といった具...